緩和ケア研修、拠点病院以外にも拡大へ-厚労省検討会

厚生労働省の「がん等における緩和ケアの更なる推進に関する検討会」は7日、来年6月に施行予定の第3期のがん対策推進基本計画(基本計画)の策定に向けて議論した。この日は、複数の委員から、がん診療連携拠点病院(拠点病院)の医師だけでなく、がん診療にかかわるすべての医療従事者に緩和ケア研修の受講を義務付けるべきとの意見が出た。こうした指摘を踏まえ厚労省は、緩和ケア研修を拠点病院以外にも拡大する方向で基本計画を見直す方針。【松村秀士】

がんなどに伴う体や心の苦痛を和らげる緩和ケアの研修については、拠点病院でがん診療に携わる医師は定期的に受講する必要がある。しかし、それ以外の医療機関の医師らには受講が義務付けられていないことなどから、専門的な緩和ケアを担う医療従事者が不足し、患者に緩和ケアが適切に提供されないケースが少なくないのが実情だ。

こうした状況を踏まえ、7日の会合で中川恵一委員(東大医学部附属病院放射線科准教授)らは、緩和ケアの効果的な推進に関する提言書を提示した。提言書では、緩和ケアの提供体制を充実させるため、拠点病院の医師以外でがん医療に携わる医師や看護師、薬剤師らにも緩和ケア研修を義務付けるべきだと指摘。また、すべての臨床研修医に対する受講の義務化も提案した。服部政治委員(がん研有明病院がん疼痛治療科部長)も、「緩和ケア研修の受講を義務化しないと、緩和ケアに関する問題は解決しない」と述べた。

これらの意見を受け、厚労省は、拠点病院の医師以外のがん医療従事者にも研修の受講を促すよう、現行の基本計画を見直す方針だ。

■全医学部に「緩和医療学講座」設置求める声

細川豊史委員(京都府立医科大疼痛・緩和医療学講座教授)は、医師になる前からの緩和ケア教育の重要性を強調し、「すべての医学部に緩和医療学講座を設置することは必須」と指摘した。また、緩和ケアが必要な患者を、疼痛や嘔吐などの症状を和らげる緩和ケアチームが診療した場合に診療報酬で算定される「緩和ケア診療加算」について、「(要件である)精神科医の常勤がいなくても算定できるようにする」ことを提案した。

このほか、緩和ケアチームの人員配置基準に社会福祉士といった「(患者の)生活相談に携わる者」を入れるべきとの指摘や、医療用麻薬を「オピオイド鎮痛薬」に名称変更する必要があるとの意見も出た。

厚労省はこの日の提案などを集約した上で、次回の会合で議論の整理案を提示し、取りまとめを目指す。