患者紹介で贈収賄の疑い 愛知県警が名古屋の2医師逮捕

人工透析治療を受ける患者の紹介をめぐり現金の授受があったとして、愛知県警は二日、収賄の疑いで国家公務員共済組合連合会名城病院(名古屋市中区)の医長、赤沢貴洋(きよひろ)容疑者(41)=同市東区東大曽根町=を、贈賄の疑いで医療法人「光寿会」(本部・同市西区)の実質経営者で医師の多和田英夫容疑者(64)=同市西区城北町一=をそれぞれ逮捕した。

 逮捕容疑では、赤沢容疑者は名城病院で自分が治療して引き続き人工透析が必要な患者八人を光寿会が運営する病院や診療所に転院させる見返りとして、二月二十七日~十月二十七日、多和田容疑者から五回にわたり、銀行口座に計約六十万円の振り込みを受けたとされる。

 県警によると二人は容疑を認めている。国家公務員共済組合連合会が運営する病院の一つである名城病院の医師はみなし公務員に当たり、赤沢容疑者には自身の患者に転院先の病院などを紹介する権限があった。

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 赤沢容疑者は「車のローンや洋服代、趣味のアマチュアバンドの活動で金が必要だった」などと供述。多和田容疑者は「透析患者は治療が長期にわたる。以前は名城病院から患者を受け入れていなかったので、紹介を受ければ、利益を得られると思った」との趣旨の供述をしているという。

 赤沢容疑者は二〇〇二年四月から名城病院に勤務し、一三年四月から腎・糖尿病内科の医長を務めている。その一方で、〇五年夏ごろからは非常勤のアルバイト医師として月に数回程度、光寿会の診療所にも派遣されていた。多和田容疑者側からは患者一人の紹介につき十万円を、アルバイト代に紛れ込ませる形で、税金分を差し引いた上で入金を受けていた。

 光寿会は、ホームページ(HP)などによると、名古屋市西区と千種区、愛知県春日井市、北名古屋市で病院や診療所の計五施設を運営している。実質経営者の多和田容疑者は人工透析が専門の医師。名古屋市西区の診療所では名誉院長も務めている。

◆「信じられない」勤務先院長が会見

 医師二人の逮捕を受け、赤沢容疑者の勤務先の名城病院の伊藤隆之院長が二日午後十時から会見を開き、「職員が逮捕されたことは大変遺憾であり、患者や近隣医療機関の皆さまに心よりおわびしたい」と謝罪した。

 伊藤院長は、同病院に勤める職員は公務員に等しい規律が求められることを日ごろから呼び掛けてきたことや、〇六年にも同様の事件で別の病院の医師が逮捕されていることから「金のやりとりがあったとは信じられない」と驚きを隠さず、「県警に全面的に協力し、再発防止策を講じて信頼回復に努めたい」と述べた。