月経不順4割が経験・疲労骨折も…女性選手の健康守る対処法、学会が管理指針

日本産科婦人科学会などは、月経痛や無月経、骨粗しょう症など、女性運動選手が直面する健康問題に対処するための初の管理指針をまとめた。

 けがや不調は月経の異常と関連していることもあるが、医療者や選手、指導者によく知られていない。国際オリンピック委員会も課題としており、同学会は指針を周知し「東京五輪・パラリンピックに向け選手を支える環境を整えたい」としている。

 運動選手は、種目によっては激しい練習をしながら厳しい体重管理も行っている。女性選手の場合、運動量に見合う栄養を確保せず、体脂肪率が極端に落ちると骨を強くする女性ホルモンの分泌が低下。月経が止まり、骨折しやすくなる。

 同学会などが2014年、大学の女性選手約1600人を対象に行った調査によると、約4割が無月経や月経不順を抱え、約2割が疲労骨折を経験。やせ形ほど無月経や疲労骨折の割合が高いことも明らかになった。いずれも体操やフィギュアスケート、陸上長距離などで割合が高かった。

 指針は、国立スポーツ科学センターの産婦人科医やスポーツ栄養士、運動生理学者らが作成。トップから部活動の選手までを想定し、月経異常への対処法や栄養管理の方法など、21項目について解説している。

 高校生に多い「疲労骨折」の項目では、身長の伸びに合わせて体重を増やす必要があり、十分に食事をとり、運動量と調整することが重要とした。体重管理に悩む選手が過食や拒食に陥る「摂食障害」には、医師が選手の不安や焦りを理解して信頼関係を築くことが治療への第一歩とした。

 計量がある種目では、月経周期に伴う体重変化がコンディションづくりに影響することがある。そのため、大会の数か月前から女性ホルモンを含む薬剤(ピル)を使い、月経が試合に重ならない方法があることを紹介。競技種目や薬の副作用の表れ方、体重の増減など個人差を踏まえて対処するよう推奨した。欧米ではピルの使用が主流だが、日本では「太る避妊の薬」のイメージから敬遠される傾向が強い。ドーピング規定に基づき、使用可能な薬も解説している。

 とりまとめた東京共済病院の久保田俊郎院長(産婦人科)は、「相談を受けた医師が正しく診断し、予防と競技力の向上につなげられればいい」と話している。

 指針は3000円(税込み)で昨年秋から販売。問い合わせは同学会(03・5524・6900)。

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