硬膜下血腫、「自分の血を注入」で劇的回復

脳を覆う膜の内側で出血し、脳を圧迫して頭痛や歩行障害などを起こす慢性硬膜下血腫の一部で、「ブラッドパッチ(自家血硬膜外注入)」と呼ばれる治療が劇的に効く例があると、山王病院(東京都港区)の高橋浩一脳神経外科副部長らが、16日午後、日本脳神経外科学会(札幌市)で発表する。

慢性硬膜下血腫は、軽い頭部外傷が原因とされる。脳や脊髄の周囲を満たす髄液が、これを閉じこめる硬膜の外に漏れる「特発性低髄液圧症候群」も併せて発病している場合がある。

慢性硬膜下血腫は、頭に小さな穴を開けて血液の塊(血腫)を取り除く手術が一般的な治療法だ。ただし、同症候群を合併する硬膜下血腫で手術を行うと、脳の位置が下がるなどして逆に状態が悪化し、死亡例も報告されていた。

同症候群には、自分の血液を硬膜の外に注入し、固まらせて髄液の漏出を止める「ブラッドパッチ」が有効とされる。高橋副部長らは同症候群を合併する硬膜下血腫の患者45例にブラッドパッチ治療を行ったところ、8割にあたる36例で、手術などを必要とせず、病気が治った。高橋副部長は「ブラッドパッチは医療保険で認められておらず、早急に保険適用してほしい」と訴えている。